30数年前。
大好きな女性に、船場の いとさん だった老婦人が居られた。
鬼籍に入られて久しい。
季節は今頃の暑い日、庭を一緒に眺めながら、
「ねぇ 高原杓庵 知ってる?」
「茶杓三百選ですね。」
「好きだったのよ。」
「へー」
「私じゃなく、慶三さん(杓庵)が、私のことを好きだったの。」
「おばさん、モテたでしょうからね。」
「ふんっ ふってやったの。あいつ。」
小悪魔のように ぷいっ と云った。
以来、面識のない杓庵さんを身近に感じている。
二作三島の小服茶碗を仕入れたのも、外箱が杓庵だからかもし
れない。
小冠者なから
両國にまたかる
大物なり
茶味も俳味もある良い書付だ。
でも、杓庵さん。いとさん に袖にされたんですね、、、